執筆者 | 久米 功一(東洋大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)/川上 淳之(東洋大学) |
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発行日/NO. | 2024年10月 24-J-023 |
研究プロジェクト | AI時代の雇用・教育改革 |
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概要
近年、独立自営(雇用されない形で業務を依頼され、かつ自身も人を雇わずに、報酬を得る)の働き方が広がっており、その使用従属性をめぐっては、労働法の保護に当たるか否か、労働者性の有無が議論されてきた。しかしながら、労働者性の実態や労働者性の有無が労働者のパフォーマンスに与える影響については十分に明らかにされていなかった。そこで、本稿では、独自に労働者性を定義した上で、独立自営業者2251人のうち、約4割が労働者性を有することを確認した後、労働者性が独立自営業者のパフォーマンスに与える影響を実証的に分析した。
その結果、労働者性を有する労働者については、労働者性が高いほど、時間当たり賃金が低く、週労働時間が長く、主観的生産性が低く、幸福度・仕事満足度・生活満足度が低く、健康・良好なメンタルヘルス・ワークエンゲイジメントにマイナスであることがわかった。独立自営業のパフォーマンスに影響を与える要因として、過去の職務経験や独立自営業についた理由をコントロールしてもなお、労働者性が高いほど多くのパフォーマンス変数に負に影響していた。最後に、取引関係を考慮したところ、労働者のパフォーマンスに対して、固定的な取引関係は正に、優越的地位の乱用は負に影響し、労働者性による負の影響の頑健性も確認された。
これらの結果は、現在、独立自営業の保護に向けては競争法と労働法の両面から取り組まれているが、労働者のパフォーマンスの観点からみても、とくに労働者性の実態把握や改善が望まれることを示唆している。