成人になっても非認知能力は向上するのか―年齢と非認知能力の関係に関する実証分析―

執筆者 久米 功一(東洋大学)/鶴 光太郎(ファカルティフェロー)/佐野 晋平(神戸大学)/安井 健悟(青山学院大学)
発行日/NO. 2023年10月  23-J-043
研究プロジェクト AI時代の雇用・教育改革
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概要

労働市場の成果を左右する要因として非認知能力がある。その習得に当たっては就学前の重要性が強調されてきたが、就業期以降も伸びるか否かについては、十分に検証されてこなかった。また、心理学では、横断的データを用いて、年齢と非認知能力の関係を把握する試みがなされている研究もあるが、年齢、性別以外の要因をコントロールできていないという課題がある。

そこで、本稿では、経済産業研究所が2019年に実施した「全世代的な教育・訓練と認知・非認知能力に関するインターネット調査」の個票データを用いて、同一年齢コホートでは共通となるような要因をコントロールしても、年齢が非認知能力に関係するか否かを検証した。具体的には、非認知能力(ビッグファイブ、グリット、自尊感情、統制の所在)を年齢、性別、コホートへの影響要因(小学校の総授業時間数、卒業時の有効求人倍率、卒業時の景気動向指数、就職氷河期世代、氷河期世代)に回帰させた。その結果、協調性、勤勉性、情緒安定性、グリット、自尊感情、統制の所在に対しては、様々な要因をコントロールしても、年齢が概ね有意に正に関係しており、年齢とともに非認知能力の平均的な水準が高まることが頑健に示された。