電力システムの経済学II:上限価格と容量市場

執筆者 金本 良嗣(政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2022年7月  22-J-026
研究プロジェクト 産業組織に関する基盤的政策研究
ダウンロード/関連リンク

概要

日本の電力システム改革においては通常の電力取引市場に加えて需給調整市場と容量市場が創設され、これらの組み合わせによって電力の安定供給と経済性を両立させることが志向されている。本稿では、これらのうちで容量市場に焦点を当てる。

本稿では、容量市場に関する基本的な問題を単純な決定論的電力ネットワークモデルを用いて解説する。供給力に関する政策介入が必要となる理由として、上限価格が設定されていることや、様々な市場の失敗によって電源投資コストが過大になっていることがあげられている。これらの要因による供給力不足の解消のためには、容量市場をどう設計すれば良いのかが本稿の分析の焦点になる。これに加えて、容量市場が導入された時の送電網増強の便益評価も分析する。上限価格が設定されず、電力価格が最適に決まっているときには、地域間の値差収入が送電網増強の便益に等しくなる。容量市場が導入されたときには、これをどう修正しなければならないのかを検討する。