コロナ禍における現金給付の家計消費への影響

執筆者 宇南山 卓 (ファカルティフェロー)/古村 典洋 (京都大学経済研究所)/服部 孝洋 (東京大学)
発行日/NO. 2021年4月  21-J-022
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概要

本稿では、2020年に実施された特別定額給付金に対する家計の限界消費性向を推定した。総務省の家計調査の都市別の公表データを用いて、市町村ごとの支給タイミングの差を使って特別定額給付金の影響を識別した。家計調査は、サンプル期間中を通じてGDP統計と整合的な動きをしており、信頼性が高いことを確認している。推定された限界消費性向は10%程度となった。この推定値は日本の現金給付を対象とした既存研究での限界消費性向と同程度であり、感染症流行下でも現金給付の家計消費への影響は通常時と大きくは異ならなかった。また、コロナへの感染リスクに応じて独自の基準で消費を分類し、内訳項目ごとの限界消費性向も計測した。その結果、比較的感染リスクが高いと考えられる「対面サービス消費」は増加しておらず、「自宅購入型消費」や「店舗購入型消費」が増加していた。特別定額給付金は感染リスクが高い消費を増やさなかったと言える。

※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:21-E-043