執筆者 | 佐々木 周作 (東北学院大学)/齋藤 智也 (国立感染症研究所)/大竹 文雄 (大阪大学) |
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発行日/NO. | 2021年2月 21-J-007 |
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概要
本稿は、2021年1月に独自実施したアンケート調査の仮想的質問とその回答データを使用して、支払意思額の観点から、日本の高齢者の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種意向を把握するとともに、その特徴を明らかにする。本稿の分析結果から以下の発見が得られた。まず、高齢回答者の支払意思額は、「感染状況」と「接種の進捗状況」に依存して変化することが分かった。一方で、多くの高齢回答者は、ワクチンが無料で提供される場合には接種する意向を持っていることも分かった。いずれの状況でも、71.1%~80.9%が無料提供されるワクチンを接種すると回答した。また、強い接種意向を持つ高齢回答者は、普段から感染予防を心掛けているが、他者や社会との接触機会は多く、外出ニーズの高い人であることも分かった。ワクチンの客観的説明に加えて、接種の利己的な便益や利他的な便益を強調するメッセージを提供したときに、高齢回答者の接種意向がより強まることを支持する結果は観察されなかった。本稿では、以上の結果と行動経済学の先行研究に基づき、ワクチンの自発的な接種行動を促進するための計画の策定に向けた政策的含意を導出し、議論する。