日本経済における資源の再配分による産業のダイナミクス―事業所・企業統計調査及び経済センサスによる実証研究―

執筆者 深尾 京司 (ファカルティフェロー)/権 赫旭 (ファカルティフェロー)/金 榮愨 (専修大学)/池内 健太 (研究員)
発行日/NO. 2019年7月  19-J-040
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

本研究は、『事業所・企業統計調査』及び『経済センサス‐基礎調査』、『経済センサス‐活動調査』をパネル化した事業所レベルのデータを用いて、経済のダイナミズムを分析したものである。分析結果、以下のことが明らかになった。
①雇用変動の殆どは事業所の参入と退出によるものである。存続事業所間の資源配分による雇用の変動は限定的であった。
②雇用を生み出す主な動力は、以前は単独事業所企業の参入であったが、近年は複数事業所を持つ企業の事業所の役割が相対的に大きくなっている。
③資源の再配分による労働生産性成長の要因分解の結果、参入による労働生産性の向上は9.2万円、存続事業所間の資源配分の効果は5.6万円であったが、事業所の退出は経済の労働生産性を13.7万円ほど低下させた。
④参入・退出及び存続事業所による労働生産性向上の多くは支所事業所を通してもたらされたが、企業間事業所のM&Aによる効果は限定的で多くの部分はオーナーシップの変更を伴わない事業所を通してもたらされた。
⑤参入効果の約6割は新規設立企業によるものであった。
⑥労働生産性(従業者一人当たりの付加価値)は事業所間で大きく偏っており、経済全体で作り出される付加価値の半分以上は約2割のトップ事業所によってもたらされる。
⑦事業所間の労働生産性の格差が大きい産業ほど、全要素生産性の成長率が高い傾向にある。
⑧参入・退出効果のほとんどが一部の生産性の高い事業所の参入・退出によってもたらされており、宿泊業,飲食サービス業や卸・小売業などの非製造業でより顕著であることが確認される。