「中間財の国際調達が企業パフォーマンスに与える影響」―企業および事業所の生産性と輸出、雇用に注目して―

執筆者 金 榮愨 (専修大学)/乾 友彦 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2019年3月  19-J-016
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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概要

近年の生産工程の国際分業の急速な進展に伴い、企業のオフショアリングや海外アウトソーシングが当該企業及び関連企業に与える影響に関する関心が高まっている。OECDによるGlobal Value Chain Index(GVCI)で日本企業のグローバルバリューチェーンへの参加度をみると1995年の29.3%から2009年における47.7%へ上昇している。またRIETI-TIDデータベースによると、中国からの部品等の日本への輸出は、2000年の57.8億ドルから2016年には250億ドルへと急増している。

本研究は、日本企業による中間財の国際調達が当該企業のパフォーマンス、特に輸出に与える効果に注目して分析した。まず、中間財の国際調達が企業の生産性に与える効果を分析したところ、既存研究と同様に生産性にプラスの効果があることが判明した。地域別には北米、欧州からの輸入の効果が大きく、中国からの輸入には効果が認められなかった。この結果から中間財の国際調達には技術のスピルオーバー効果があるものと解釈できる。加えて輸入は企業内における資源配分の効率化によって企業の生産性を高めるものと思われる。企業の生産性をコントロールしたうえで、事業所、企業の輸出行動に与える効果を推計したところ、中間財の国際調達は事業所及び企業の輸出の開始、輸出金額の増加にプラスの効果があることが判明した。この結果は、生産性向上による効果に加えて、価格の低下を通じて輸出が促進されることを示唆する。また中間財の国際調達には、事業所、企業の雇用へのマイナスの効果は認められなかった。