日本の創業企業と創業金融の実態

執筆者 内田 浩史 (神戸大学)/郭 チャリ (神戸大学)
発行日/NO. 2019年2月  19-J-007
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

本稿の目的は、日本における創業企業と創業金融の実態を明らかにすることである。本稿では2017年に筆者たちの研究グループが行った2つの創業アンケート調査から得られるデータを用い、記述統計を分析して創業企業の特徴、創業企業による資金調達手段の利用状況、資金制約の実態を示すとともに、因子分析の手法を用いて様々な資金調達手段の利用パターンを明らかにする。また、同じ分析を日本政策金融公庫の新規開業実態調査、アメリカの創業企業調査に関しても行い、4つの調査の間で結果を比較する。創業企業の特徴に関する分析からは、日本の3つの調査はそれぞれ異なるタイプの創業企業を捉えており、各調査の中にも様々なタイプの創業企業が含まれていることが分かった。また資金調達手段の利用状況ならびに利用のパターンに関する分析からは、4つの調査のすべてにおいて、経営者の自己資金が非常に重要であるとの結果が得られたものの、その重要度や他の資金調達手段の利用、あるいは組み合わせ方に関して調査間あるいは各調査の回答企業内で違いがあることが分かった。最後に資金制約の実態に関しては、2つの企業向けアンケート調査の回答企業に関する限り、資金制約に直面している企業は少数派であるものの、その程度にはサンプル間で差があることが示された。