日本の世帯属性別貯蓄率の動向について:アップデートと考察

執筆者 宇南山 卓 (ファカルティフェロー)/大野 太郎 (信州大学)
発行日/NO. 2018年8月  18-J-024
研究プロジェクト 経済主体間の非対称性と経済成長
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概要

全国消費実態調査・家計調査・家計消費状況調査を補完的に利用することでマクロ統計と整合的な貯蓄率のデータを構築した宇南山・大野 (2017a; 2017b) を最新データまで拡張し、推計方法を改善した。国民経済計算や家計調査の結果との比較を通じて、構築されたデータの妥当性の検討をさらに進めた。更新されたデータにおいても、高齢者世帯比率の増加ではなく高齢者世帯の貯蓄率の低下がマクロの貯蓄率低下の原因であるという結果は維持された。さらに、年齢階級別・コーホート別の所得と支出の動向から、ゼロ金利政策による財産所得の減少と公的年金給付の減少が高齢者の貯蓄率の低下要因であることを明らかにした。賦課方式の年金制度のもとでは年金給付の減少は高齢化の結果であり、その意味で高齢者の貯蓄率の低下は高齢化の結果の1つである。