日本企業のIT化が何故遅れたのか

執筆者 乾 友彦 (ファカルティフェロー)/金 榮愨 (専修大学)
発行日/NO. 2018年4月  18-J-014
研究プロジェクト 人工知能等が経済に与える影響研究
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概要

本研究は、日本企業の大規模なパネルデータ(2006年~2014年)を使用し、企業のIT投資の導入・拡大要因および全要素生産性(TFP)に与える影響を実証的に分析するものである。
外国企業による経営参加が最新の技術、経営手法の導入につながることが多くの既存研究において指摘されていることから、ITを活用した経営管理手法の導入の代理変数として外資系比率を使用した。他のさまざまな要因をコントロールしても外資比率が高いことが、ITの導入および拡大とプラスの関係にある結果が得られた。加えてIT導入および拡大の両者において同一産業におけるIT投資がプラスの影響を与えることが判明した。以上のことからITの導入や拡大に関して、外資系企業や同一産業における他企業のIT導入といったITを活用した経営管理手法のスピルオーバー効果がIT投資の拡大に重要な役割を果たすものと推察される。
次にIT投資がTFPおよびTFP上昇率に与える効果を分析した。その結果、TFPに影響を与えると考えられる他の様々な要因を考慮に入れてもIT投資はTFPおよびTFP上昇率の両者にプラスの影響を与えることが判明した。