管理職の一側面

執筆者 神林 龍 (一橋大学経済研究所)/樋口 美雄 (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2018年4月  18-J-013
研究プロジェクト 日本企業の人材活用と能力開発の変化
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概要

管理職は、女性の社会進出の指標とされたり、組織の生産性を左右するとされるなど、諸方面で重要な役割を担うと考えられている。ところが、総務省によれば管理的職業が減少トレンドにある一方、厚生労働省によれば減少する気配がないなど、政府統計によってさえ、その実態は捉えがたい。本稿では、経済産業研究所が実施した、調査会社の登録モニターに対するインターネットを通じた調査をもとに、政府統計の管理職の定義の関係や管理職の業務の実態についてまとめる。そこで発見されたことで最も重要なのは、第一次考課を担当する直接の部下がいる被用者でも、総務省定義にも厚生労働省定義でも管理職とされない場合があることがわかったことである。その主体は女性・非正社員であることから、戦力化され管理的職掌を任せられるようになった非正社員層が、政府統計では管理職として把握されない可能性がある。政策ターゲットとして管理職を定める場合、どのような定義を用いるかには細心の注意が必要だろう。