執筆者 | 松川 勇 (武蔵大学) |
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発行日/NO. | 2018年1月 18-J-002 |
研究プロジェクト | 人工知能等が経済に与える影響研究 |
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概要
本稿は、2007–2012年度の企業活動基本調査の個票データをもとに日本の製造業におけるITの利用と企業のマークアップの定量的な関係を分析し、ITの利用がマークアップに及ぼす影響を明らかにした。ITの利用に関する指標として、情報処理部門に従事する従業者数の割合、無形固定資産に占めるソフトウェアの割合、有形固定資産の当期取得額に占める情報化投資の割合、情報処理通信費と売上高の比率、の4つを取り上げた。労働・資本・中間投入の3要素のトランスログ型生産関数を推定して計測した企業別のマークアップを、ITの利用に関する指標によって回帰した結果、情報処理部門に従事する従業者数の割合の上昇はマークアップを引き上げるのに対し、他の3つの指標が上昇するといずれもマークアップが低下する点が示された。ITの利用を中心とした職種へのシフトは、生産性の向上を通じた限界費用の低下とともに、付加価値の高い財の供給を通じた生産物価格の上昇をもたらした可能性がある。対照的に、ITの利用に伴う投資などに必要な追加費用は、限界費用の上昇を通じてマークアップの低下を招く可能性がある。