人文社会系大学教育の分野別教育内容・方法と仕事スキル形成

執筆者 本田 由紀 (東京大学)
発行日/NO. 2017年11月  17-J-071
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本研究は、人文社会系の大学教育の内容・方法の分野別の特徴を把握し、それが大学卒業後の仕事スキルとどのように関係しているかを検討することを目的とする。社会人調査および大学生パネル調査の分析の結果、以下の知見が得られた。

第1に、人文社会科学系内部の個別の学問分野の間で、大学教育の内容・方法にはかなりの相違がある。社会科学系の各分野では相対的に方法的双方向性が低く、人文社会科学系では相対的に内容的レリバンスが低い。教育学は特に内容的レリバンスが高く、社会学・心理学は中間的でバランスが取れている。このような分野別の大学教育の特性は、分野や大学タイプによるST比の相違からも影響を受けている。

第2に、人文社会科学系の大学教育の内容・方法は、大学最終学年時点および卒業後のスキル形成に一定の影響を及ぼしている。25~34歳の社会人を対象とした分析では、大学教育の内容的レリバンスおよび方法的双方向性の両者が25~34歳時点の判断スキルおよび交渉スキルと関連しており、方法的双方向性は情報スキルとも関連していた。これらの関連のあり方は、分野によっても異なっている。また、大学在学中から卒業後2年目までを追跡したデータを用いた分析では、内容的レリバンスの高い授業、方法的双方向性の高い授業やゼミの密度の高さが、大学4年時点の主に柔軟スキルを介して、卒後2年目時点の判断スキル・交渉スキルを高めていた。