地方創生に対する地域金融機関の営業現場の取り組みの現状と課題 ―2017年・RIETI支店長アンケートの結果概要―

執筆者 家森 信善 (ファカルティフェロー)/相澤 朋子 (日本大学)/海野 晋悟 (高知大学)/小川 光 (東京大学)/尾﨑 泰文 (釧路公立大学)/近藤 万峰 (愛知学院大学)/高久 賢也 (広島市立大学)/冨村 圭 (愛知大学)/播磨谷 浩三 (立命館大学)/柳原 光芳 (名古屋大学)
発行日/NO. 2017年7月  17-J-044
研究プロジェクト 地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-
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概要

我々は、2017年1月に、地域金融機関の営業店舗の支店長7000人に対して「現場からみた地方創生に向けた地域金融の現状と課題に関する実態調査」を実施し、2868人からの回答を得ることができた(回収率 41.0%)。本稿は、この調査結果の概要を紹介することを目的としている。本調査の最大の特徴は、地域金融機関の本部ではなく、実際に顧客と接触している営業現場の責任者である支店長の方々を調査の対象にしている点である。そして、現在、金融庁が提唱し、多くの金融機関が推進している事業性評価や地方創生への取り組みの妥当性を裏付ける結果が得られた。たとえば、「地元のために働ける」という意識が強くなった人ほど、現在の仕事に対する「やりがい」を強く感じているし、事業性評価にしっかりと取り組めている支店ほど、職員にとってやりがいのある職場となっている。さらに、目利き力を重要な資質・能力として評価している金融機関の方が、職員の目利き力が向上している。ほとんどの支店長が地方創生を金融機関の使命だと考えているが、同時に、国や地方自治体と協働して顧客企業を支援する際にさまざまな障害を経験しており、協働を進めるために改善の余地が残っている。