地域を跨ぐ本社サービス投入の推計と影響評価

執筆者 新井 園枝 (経済産業研究所 計量分析・データ専門職)/金 榮愨 (専修大学)
発行日/NO. 2017年3月  17-J-013
研究プロジェクト 地域別・産業別データベースの拡充と分析 -地方創生のための基礎データ整備-
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概要

現在国民経済計算の全国のGDPと県民経済計算における県内総生産の合計には26兆円を上回る規模の相違が見られる。このような不整合が起こる1つの原因として、都道府県間を跨ぐ「本社サービス」の扱いが指摘されてきた。東京都とそれ以外の46道府県との間では、県内総生産の推計概念の違いがあり、東京都以外の46道府県の県民経済計算では、企業の本社部門を、「本社サービス」という独自の付加価値を生み出しているとは捉えず、本社以外の事業所も本社から「本社サービス」という中間投入を受けていると扱っていない。一方、本社が集中する東京都では、「本社部門」を独立した項目として取り入れた「東京都産業連関表」を独自に作成し、「本社サービス」の生産活動を含めた総付加価値を早くから行ってきた。そこで、本研究では幾つかの基礎データを組み合わせて、各都道府県に所在する本社が生み出す「本社サービス」の付加価値額と、都道府県間を跨ぐ純投入としての「本社サービス」を推計し、これらが県内総生産や都道府県間生産性格差に与える影響を分析する。産業連関表を用いて県民経済計算の推計を行った場合、本社の多い地域に比べて傘下事業所の多い地域は県民経済計算の総生産額が過大に推計される傾向にある。本研究は県民経済計算の推計精度の向上、より整合的な県民経済計算推計方法の提案に繋がるだけでなく、近年の地方創生議論のなか本社部門の集中と分散が地域に及ぼす影響について議論する基礎となることが期待される。