執筆者 |
乾 友彦 (ファカルティフェロー) /中室 牧子 (慶應義塾大学) /枝村 一磨 (科学技術・学術政策研究所) /小沢 潤子 (内閣府) |
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発行日/NO. | 2014年12月 14-J-055 |
研究プロジェクト | ダイバーシティとワークライフバランスの効果研究 |
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概要
経営学の分野において企業における人材のダイバーシティと企業全体のパフォーマンスの関係が議論されるようになって久しい。米国の先行研究では、外見から識別可能な「デモグラフィー型」の人材ダイバーシティと実際の業務に必要な能力や経験のダイバーシティとなる「タスク型」の人材ダイバーシティのうち後者が企業のパフォーマンスに影響を与えるということで意見の一致をみつつあるが、日本ではこうした分野の研究は十分に蓄積されていない。本研究では、会社役員四季報と企業財務データを用いて、日本企業においてダイバーシティがイノベーション活動に与える影響について、企業のイノベーション活動の代理指標として研究開発集約度、特許出願件数を使用して検証を行った。その結果、企業の固有の効果をコントロールすると、ダイバーシティはいずれも統計的に有意な影響をもたらさないことが判明した。ただし、外資比率の高い企業や、国際化が進展している産業に属する企業においては、女性役員比率が企業のイノベーション活動に一部プラスの影響を与えることが示された。このことから、ダイバーシティが企業のパフォーマンスに一定の効果を発揮するためには、その効果を発揮できるような環境の整備が必要であるものと推察される。