ホワイトカラー正社員の管理職割合の男女格差の決定要因――女性であることの不当な社会的不利益と、その解消施策について

執筆者 山口 一男  (客員研究員)
発行日/NO. 2013年9月  13-J-069
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概要

経済産業研究所が行った『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する国際比較調査』のうち、日本企業調査とその従業員向け調査のリンクデータを用い、ホワイトカラー正社員中の管理職割合の男女格差の決定要因を分析した。まず厚生労働省の企業人事担当者へのアンケート調査に出てくる女性の離職率の高さなど「女性管理職者がいない・少ない主な理由」は、原因の1つではあっても客観的には主な理由ではなく、現在の勤め先への勤続年数が同じでも高卒男性に比べ大卒女性の管理職割合は遙かに劣り、性別という生まれの属性が教育達成より重んじられる、わが国の「前近代的」人材登用慣行が真の問題であることを示す。また男女の人的資本の違いで説明出来る課長以上割合の男女格差は20%程度であること、長時間労働は男性より女性にとってむしろ管理職要件となっていると考えられること、年齢が同じでも有配偶男性は最終子の年齢により管理職割合は増え女性は逆に減る傾向があり、企業による夫婦の伝統的役割分業の押しつけが管理職割合に反映されていること、ワークライフバランス達成への組織的取り組みのある企業や正社員1000人以上の企業は男女格差が少なく、その格差削減の度合いは女性の離職率が減ればさらに大きくなることなどを示す。また格差解消には企業が総合職と一般職の区別などの企業内トラッキングによる選別により大多数の女性を管理職登用から外す間接差別的制度の廃止とワークライフバランスの達成できる職場の実現をまず実行せねばならず、その上で将来的には学歴の男女平等化と女性の就業継続が大きな鍵であること、などを示す。