ミンサー型賃金関数の日本の労働市場への適用

執筆者 川口 大司  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2011年3月  11-J-026
研究プロジェクト 少子高齢化時代の労働政策へ向けて:日本の労働市場に関する基礎研究
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概要

この論文ではミンサー型賃金関数を用いて日本の賃金構造を推定しようとする際に留意すべき点をまとめる。賃金構造基本統計調査の2005年から2008年までのミクロデータを用いた推定の結果、以下の点が留意すべき点としてあげられる。1.賃金構造は60歳を境に不連続となるため配慮が必要である。2.被説明変数の賃金率は自然対数変換するのが適切である。3.学歴は連続変数変換せずダミー変数として取り扱うのが適切である。4.賃金―潜在経験年数プロファイルは学歴によって異なる。5.賃金―潜在経験年数プロファイルは2次関数で近似できる。6.学歴×潜在経験年数グループ内分散は潜在経験年数とともに増加する。不均一分散の存在を考慮すべきである。また、同期間の米国のCurrent Population Survey (CPS) をベンチマークにした比較で、日本の賃金―勤続年数プロファイルは米国のものよりも急傾斜であることが確認された。

「ミンサー型賃金関数の日本の労働市場への適用」阿部顕三・大垣昌夫・小川一夫・田渕隆俊編『現代経済学の潮流2011』東洋経済新報社(2011年8月)67頁-98頁