非上場企業における私募債と銀行借入の選択

執筆者 佐藤 豊彦  (財団法人東京都中小企業振興公社) /胥 鵬  (法政大学)
発行日/NO. 2010年12月  10-J-056
研究プロジェクト 金融・産業構造の変化に関する研究会
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概要

この論文でわれわれは中堅・中小企業の決算データを用いて、私募債と銀行借入の選択の決定要因を分析した。私募債は主に満期期間が中長期であり、銀行保証付が多い。私募債を発行する企業には、収益性が高く、負債比率が低い優良中規模企業が多い。また、私募債発行企業と比べて、長期借入で資金を賄う企業は固定資産比率が高い。他方、小規模企業と情報非対称性問題が深刻な中規模企業は銀行借入を選択する。したがって、優良中規模企業は銀行からの頻繁な介入を回避するために私募債の発行によって中長期的資金を調達することと同時に信用度を向上させるという仮説を支持するものである。われわれの研究は中堅・中小企業における資金調達の選択に対し重要な示唆と政策含意を与えるといえよう。他方、私募債の発行に対して、メインバンクの不良債権比率が高い企業ほど私募債の利用が少ない傾向にある。このことから、私募債発行は銀行貸し渋りに代替ではないことを示唆する。