現場からみた労働時間制度改革-国立大学法人の例を中心に-

執筆者 小嶌 典明  (大阪大学)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-017
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概要

公務員の世界では、週休日(土日)と休日(祝日や年末年始)が明確に区別され、「正規の勤務時間においても勤務することを要しない」日と定義される休日は、実際には勤務しなくても勤務時間にカウントされる。このことは、公務員の場合、時間単価が民間に比べ低くなる(超過勤務手当もその分少なくてすむ)ことを意味しているが、こうした計算上のトリックは、民間企業には当然のことながら認められていない。他方、公務員の場合には、民間企業とは違い、数多くの休暇制度が整備されている。年次休暇や病気休暇のほか、17種類を数える特別休暇がそれであり、常勤職員(民間企業の正社員に当たる)の場合、そのすべてが有給の休暇であるところに特徴がある。また、年次休暇については8割出勤要件が課されず、病気休暇や産前産後休暇の期間中も給与が減額されないといった違いもある。こうした公務員の世界から、法人化に伴って、労働関係法令の適用される世界への移行を余儀なくされた国立大学が、教員への裁量労働制の導入等、試行錯誤を繰り返すなかでどのように労働時間制度改革を進めていったのか。本稿では、このような国立大学法人の例を中心に、現場からみた労働時間制度改革のあり方について考えてみたい。