ホワイトカラーの労働時間制度の立法的課題

執筆者 島田 陽一  (早稲田大学)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-015
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概要

ホワイトカラー労働は、工場労働や単純な事務労働のような定型的な労働ではなく、非定型的な労働であって、現行法制の規制に馴染まない働き方である。この結果、ホワイトカラー労働者の労働時間をめぐっては、事実と規範の乖離が著しい状況になっていることを考慮すると、ホワイトカラー労働者の働き方に適合的であって、かつ、長時間労働を効果的に抑制する仕組みを形成することが必要である。具体的には、ホワイトカラー労働者の労働は、定型的な労働時間規制に適合しないので、相当程度の範囲のホワイトカラー労働者について、現行の労働時間規制の適用を除外して、新しい労働時間制度の適用を受けるようにすべきである。

この新しい労働時間制度は、労働時間の長さの規制とは異なる手法で、ホワイトカラー労働者の健康および仕事と生活の両立を確保するために必要な生活時間を保障できるものでなければならない。そのために、この制度の適用対象には、休日・休暇が保障され、かつ安全衛生上の措置も捉えることが必要である。また、この制度にあっては、法律が導入手続きおよび導入の一般的な条件を定めるが、具体的な制度の有様は、適用範囲の決定を含め、最終的にこれを企業レベルの集団的な労使自治に委ねる。従って、この制度が実現するためには、企業レベルの集団的な労使のコミュニケーションの確立が鍵となる。