労働時間法制の課題と改革の方向性

執筆者 水町 勇一郎  (東京大学)
発行日/NO. 2010年2月  10-J-012
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概要

働き方を変えるには、その問題点と問題解決の方向性を労使の間で話し合い、現場主導で改革を進めていくことが何よりも重要である。しかし同時に、人間性を損なうような働き方に法的な制約を加えることや、労使当事者の建設的な話し合いを法的に促していくことも、重要な課題となる。

日本の労働時間をめぐる問題を法的にみた場合、改革の大きなポイントは、(1)長時間労働問題への対応を図ること、(2)労働者の多様化(法と実態の乖離)に対応するために法制度の整理・再編を図ること、(3)((2)の対象者も含めて)健康問題への組織的対応(予防)を図ることにある。そのためには、労働基準法、労働安全衛生法、労働保険料徴収法などの関係法令を改正・整備することが必要になる。

また、このような改革を実現し、日本の働き方を変えていくためには、単に労働時間法制に手を入れるだけでなく、他の諸制度との有機的連携、法制の背景にある日本的な雇用システムとの関係、政策的要請を実現するための実効的な法システムの構築をも視野に入れて、幅広くかつシステムの根本から議論をしていくことが重要である。

本稿では、労働法の視点から、日本の労働時間制度の課題と改革の方向性について考察する。