国立大学システムの機能に関する実証分析―運営費交付金の適切な配分に向けて―

執筆者 島一則  (広島大学)
発行日/NO. 2009年12月  09-J-034
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概要

現在、国立大学財政のあり方を巡り、さまざまな議論(「成果に基づく配分」「競争的な配分」「選択と集中」など)がなされている。しかしながら、それらの議論が、国立大学が果たしている機能についての十分な現状理解のもとに行われているかどうかに関しては疑問が残る。そこで、本稿では国立大学システムのI.研究機能、II.教育機能、III.大学開放機能のそれぞれについて定量的・定性的データに基づいて検討する。結果として、(1)国立大学システムが大学システムの中で「知の中核」(I.研究機能、IIb.大学院教育機能、IIIa.研究的大学開放機能の中核)となっていること、(2)地方国立大学は、それぞれの置かれた地域において「知の中核」としての機能を連携・分担しつつ、「知の拠点」となっていること、(3)国立大学システムは全体として、日本の教育社会の「インフラストラクチャー」となっていることが明らかになる。以上の実態に基づき、「成果に基づく配分」「競争的な配分」「選択と集中」といった資金配分の問題点と基盤的な資金の重要性について指摘する。