環境と貿易をめぐる法的分析

執筆者 山下 一仁  (上席研究員)
発行日/NO. 2009年10月  09-J-027
ダウンロード/関連リンク

概要

1994年までのガット時代では、自由貿易促進の観点から、環境のためにガットの例外を認めることについては厳しく判断していた。

しかし、このような厳格な解釈はWTOが成立してからは緩和されるようになっている。これは環境等の非貿易的関心事項についても配慮しなければ、WTOに対する環境NGO等の理解を得られなくなってきたことが背景にある。条文上はWTO設立協定の前文に環境への配慮が規定されたことがこのような解釈の変更に大きく貢献している。また、環境等に配慮したSPS協定やTBT協定の規定がガット第20条の解釈にも影響しているように思われる。

本DPではガット・WTOの条文解釈がどのように変遷したかを説明するとともに、ガット第20条(b)の必要性の要件(輸出国の利益を考慮した「より貿易制限的でない代替手段」と輸入国にとって「合理的に利用可能」という要件は逆の方向に作用すること、SPS協定第5条6項の規定の必要性の解釈への影響、韓国・牛肉流通規制事件上級委員会が示したバランシング・テスト等)、ガット第20条(g)の有限天然資源に「関する」措置の解釈(外国での産品非関連のPPMを認めていること)、ガット第20条柱書の解釈(これはガット第3条のように同種の「産品」間の差別ではなく「同様の条件の下にある諸国の間に」おける差別等を規定していること、SPS協定はこれを明確にしたものであること等)、TBT協定など他のWTO関連協定等について分析を行う。