地方公営企業の経営効率化対策の政策評価について
- 新潟県企業局経営改革プログラム(工業用水道事業・電気事業)の事例-

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2009年10月  09-J-026
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概要

地方公営企業の経営については一般に民間と比較して経営効率が低く、地方公共団体からの助成に恒常的に依存するなど多くの問題が指摘されている。一方で、こうした現状を改善すべく地方公共団体においては公営企業の経営効率化のため様々な取組みを実施しているところである。

本稿においては、新潟県企業局「経営改革プログラム」を具体的事例として、工業用水道事業・電気事業の時系列での経営指標を用い、経営効率化施策の実施による効果を各種の経済学的手法を用いて定量的に政策評価することを試みた。

新潟県企業局「経営改革プログラム」による各事業の2005~2008年度迄の経営上の実績値を、2001~2004年度の直前期間と比較して分析した結果、工業用水道事業・電気事業とも費用便益差が正となっており、余剰の増加により経済厚生を向上させたものと推定される。工業用水道事業においては、主として新規需要開拓の効果により年間事業規模約17億円に対し年平均約2億円程度の費用便益差を生じ、「断水」の増加リスクに比べ十分な経営効率化の効果が得られたものと評価された。

電気事業においては主として人員適正化と人件費削減による供給費用低減の効果により、年間事業規模約47億円に対し年平均約4億円程度の費用便益差を生じ、事故などによる発電停止のリスクに比べ十分な経営効率化の効果が得られたものと評価された。

今後とも経営効率化と経済厚生の向上を進めていく観点からは、従来の取組みに加え、異種事業間や都道府県・市町村間での協力による合理化や外部受託の推進、工業用水契約料金の引下げ、発電電力売電方式の見直しなどの包括的な対策を進めていくことが必要であると考えられる。