執筆者 |
原田泰 (大和総研) /佐藤綾野 (高崎経済大学) |
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発行日/NO. | 2009年9月 09-J-025 |
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概要
戦間期の金融政策は、今日のように、インフレを避けつつ景気安定を図るという目標を持っていたのだろうか。また、当時の金融政策は金本位制への復帰を目標としていたのだろうか。
本稿は、鎮目(2002)を参考にしつつ、テイラー・ルールとマッカラム・ルールを用いて、戦間期の金融政策が何を目標として行われてきたかを分析する。鎮目の分析は、年次データによることでデータ数が限られ、期間ごとの分析が困難になっていることなどの問題がある。そこで、私たちは、月次データを用いることによって、特定の期間に焦点を置いた分析が可能になると考えた。
テイラー・ルールによる分析の結果、鎮目と同じく、当時の金融政策はインフレまたはデフレを増幅させる方向で働いてきたことが分かった。したがって、現実の金融政策を見る限り、旧平価で金本位制への復帰を目指す目標を立てていたとは考えられない。また、貿易収支、為替レートなど対外均衡に考慮した金融政策が、ある程度は行われていたことも分かった。
マッカラム・ルールによる評価でも同じような結論となる。マネタリーベースの成長率を名目GDPの望ましい成長率に依存させるマッカラム・ルールの下で金融政策を行っていたら、日本の名目GDPの変動はより緩やかなものとなっていたと推測できる。また、旧平価で金本位制に復帰するためには、物価を下落させるためにマネタリーベースを縮小しなければならなかったが、そのようなことはなされていなかった。
金旧平価で本位制に復帰するとは、物価水準を戦前にもどすことである。不思議なことに、戦間期の金融政策では、このことが全く理解されていなかったように思われる。