執筆者 |
宮島 英昭 (ファカルティフェロー) |
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発行日/NO. | 2009年6月 09-J-017 |
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概要
本稿の課題は、1990年代から近年にいたる日本企業のコーポレート・ガバナンスの進化と現局面の特徴を、多様化とハイブリッド化をキーワードに概観し、今後の改革の方向に関して政策的含意を引き出す点にある。第1に、企業システムの進化に関する、収斂か異質性の持続か、という論争に対してわれわれの見方を提示する。日本企業の進化は、単一のパターンを示しておらず、米国型への単純な収斂とは理解できないこと、むしろ、市場ベースの仕組みと、関係ベースの仕組みという2つの異なったモードの結合という意味でハイブリッドな進化を示していることを強調する。第2に、1980年代から始まり、1990年代半ばから加速する企業システムの進化のプロセスを、本稿がタイプIハイブリッドと呼ぶ企業を中心に追求する。その際、焦点は、本来相互に補完的な企業統治と内部組織が、いかにしてハイブリッドな形に進化したかにある。第3に、この進化のプロセスで新たに登場したハイブリッド型企業は、実際に、企業行動や、企業パフォーマンスに有意な影響を与えたのか否かを検討する。ハイブリッド型企業が日本企業のパフォーマンス向上の中心となっている可能性を示し、さらに、企業のM&Aの選択を例にとりながら、コーポレート・ガバナンスや組織構造が企業のM&Aなどの戦略的意志決定に有意な影響を与えていることを明らかとする。最後に、現在の多様化した日本企業の3つのタイプに即して、今後のコーポレート・ガバナンス改革の課題を整理する。