執筆者 |
戒能 一成 (研究員) |
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発行日/NO. | 2009年6月 09-J-014 |
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概要
過去30年間の都道府県別に見た日本の地域経済の動向については、人口変化や所得水準変化において大きな差異があり、それぞれの変化が各都道府県別の産業構造やその変化と密接な関係があったことが知られている。一方、反対に各都道府県別の産業構造やその変化に対し家計消費が与えた影響については必ずしも明らかではない。
本稿においては、家計調査報告・商業統計など都道府県を識別した長期統計値を用い、地域経済分析という視点から都道府県別の家計消費や小売売上・サービス生産とその変化の動向を観察し、費目別の家計消費がどこで行われたのかという点に着目してこれらの比較を行うことにより、家計消費が小売・サービス業に与えた影響について分析を行った。
分析の結果、家計消費側においては健康・娯楽サービス指向の進展などの変化はあったが、都道府県間でほぼ「相似的」に消費支出が変化したのに対し、小売・サービス業の人口1人当売上・従業員数などは1人当県民所得が相対的に大きな都市部に集中する傾向が進展しており、特に健康・娯楽サービスなどの分野で消費者が地方部から都市部へ移動して消費支出を行う「消費漏出」現象が顕著であったことが示された。
また当該「消費漏出」現象の結果、都市部では再開発などを契機に従業員規模の大きな事業所が参入し過剰な迄に新陳代謝が進み小売業では事業所数が減少したが、地方部では既存事業所が温存され新陳代謝が停滞するという二極分化が生じていることが判明した。
従って、地域経済の活性化という視点からは、地方部での小売・サービス業の新陳代謝機能の回復と都市部からの「逆・消費漏出」を形成することが必要であり、小売・サービス業の開廃業促進、地方都市の再開発における局所的な高級商業地域の整備、観光開発・農商工連携の支援などの政策を推進していくことが有効であると考えられる。