企業のパフォーマンスは合併によって向上するか:非上場企業を含む企業活動基本調査を使った分析

執筆者 滝澤美帆  (東洋大学) /鶴 光太郎  (上席研究員) /細野薫  (学習院大学)
発行日/NO. 2009年4月  09-J-005
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概要

本論文では、レコフ社のM&Aデータ及び『企業活動基本調査』の企業データを利用し、1994年度から2002年度までの非上場企業を含む1590事例の企業合併のデータベースを作成し、企業の合併前後のパフォーマンスの変化をについて分析を行った。全産業、製造業、非製造業にサンプルを分け、Propensity Score Matchingの方法を用い、比較対象となるべき企業パフォーマンスをコントロールした上で、合併元企業の合併直前から合併後におけるパフォーマンス変化を計測すると、特に、製造業ではTFPレベル、ROA、キャッシュフロー比率、負債比率といった指標の落ち込みが大きい。一方、合併時点における統合コストを考慮するため、合併直後からその後におけるパフォーマンスの変化をみると、製造業、非製造業双方についてROAやキャッシュフロー比率において改善がみられ、その改善のタイミングは非製造業の方が製造業よりも早い。また、合併直後からのパフォーマンス変化を更に合併の形態に分けて分析すると、製造業の場合、関係会社間、異業種間の合併では、TFP、ROA、キャッシュフロー比率の改善がかなり明確である。こうした結果は、製造業、非製造業、また、関係会社間、非関係会社間の合併においては、合併に伴う調整・取引コストの大きさが異なることを反映しており、また、製造業の異業種間合併の場合、範囲の経済等によるシナジー効果が発現していると解釈できる。