再生可能電力の送配電・蓄電費用措置制度に関する経済的考察

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2009年1月  09-J-001
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概要

再生可能エネルギーをエネルギー源とする再生可能電力は、エネルギー安全保障、経済社会の持続可能性や気候変動問題への対応策として非常に重要であり、その導入を有効に推進していくことはエネルギー・環境政策上の大きな課題である。

従来から、再生可能電力に対しては、新エネ等電気利用法(RPS法)による電気事業者への一定比率の導入義務づけなど様々な支援制度が設けられているが、再生可能電力の導入拡大に伴い需給調整に必要な送配電・蓄電費用が増加するが、これをどのように措置することが合理的なのかという点が政策上の新たな論点として提起されている。

本稿においては、空間経済学の応用などにより、再生可能電力の種類・特性別に建設費用・用地面積・稼働率などを模式化し、再生可能電力の送配電・蓄電費用措置のあり方によってその導入費用にどのような差異を生じるのかを試算し制度の比較分析を試みた。

その結果、大規模再生可能電源については山林など地価が廉価な立地条件を選んだ上で、発電と送変電費用の合計総費用が最小となる地点に風力発電や貯水式水力発電を順次開発していくことが最も費用が小さくなり、従って送変電費用を系統側措置とするよりも発電側措置とする方が合理的であると推定された。

一方、小規模分散再生可能電源特に太陽光発電については、逆に配電・蓄電費用を需要家(発電)側措置とするより系統側措置とした方が費用が小さく合理的と推定された。当該結果は現状での技術的・経済的知見を基にした各種前提条件下での試算によるものであり、今後の制度設計に当たり更に多面的な検討を進めていく必要があると考えられる。

特に太陽光発電など小規模分散再生可能電源において、系統側措置制度下での配電・蓄

電設備整備の制約や全面自由化時の経過措置の問題などにつき注意が必要と考えられる。