電力市場のシミュレーション分析-特別高圧業務用市場におけるクールノー競争と新規大型電源の影響-

執筆者 田中 誠  (ファカルティフェロー) /金本 良嗣  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2008年12月  08-J-064
ダウンロード/関連リンク

概要

これまでの電力市場自由化の研究では、自由化全分野を対象にしたシミュレーションが行われてきたが、特別高圧業務用需要以外の分野では新規参入がほとんど起きていない。本稿では、現実にPPSの参入が生じている特別高圧の業務用需要を対象にしたシミュレーション分析を行う。今後予定されているPPSの新規大型電源の運転を想定して、PPSの供給力の増大が市場に与える影響についても分析する。これまでの研究では、一般電気事業者間で競争が行われると仮定しても、クールノー均衡の電力価格は極めて高くなるのが通常であった。本研究では、現実を踏まえて競争分野を特高業務用に限定したので、均衡価格がより現実的な水準になった。夏季における日中の1時間の取引に関して、PPSの参入が全くないベース・ケースでも、西部市場で10.08円/kWh、東部市場で11.26円/kWhの価格であった。送電混雑は、東西間を結ぶ連系線にのみ生じ、西から東に向かって送電容量一杯に電力が流れる。次に、西部市場で500MW、東部市場で1100MWがPPSにより供給されると想定した場合には、西部市場で9.99円/kWh、東部市場で10.51円/kWhの価格がつく結果となる。ベース・ケースと比較すると、西部市場で9銭、東部市場で75銭の価格低下となる。さらにPPSの新規大型電源の運転開始により、PPSの供給量が西部市場で550MW、東部市場で800MW増加するケースを考えると、西部市場で9.89円/kWh、東部市場で9.99円/kWhの価格がつく結果となる。ベース・ケースと比較すると、西部市場で19銭、東部市場で1円27銭銭の価格低下となる。