最適課税論からみたガソリン税率:日米英比較

執筆者 川瀬晃弘  (東洋大学)
発行日/NO. 2008年9月  08-J-045
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概要

温室効果ガス排出量削減の必要性から経済的手段によってエネルギー消費量を抑制しようという動きがある一方で、道路特定財源制度改革の議論の中では暫定税率について議論が集中し、望ましい税率のあり方については議論されていない。ガソリン税の税率の水準については、外部性も考慮して望ましい税率のあり方を検討すべきである。本稿では、外部費用を負担する環境税の観点から、Parry and Small(2005)の枠組みと金本(2007)で使用された外部費用のパラメータを用いて、我が国における望ましいガソリン税の税率を模索する。具体的には、税目としてガソリン税と労働所得税のみが存在する世界を想定し、税収一定のもとで経済厚生を最大にするようなガソリン税および労働所得税の税率を求める。

分析の結果、得られた最適なガソリン税率は、ファーストベストでは118.3円/ℓ、労働所得税が存在するセカンドベストでは142.4円/ℓとなり、現行の53.8円/ℓと比較すると約2.2~2.6倍の水準であることがわかった。また、最適税率を構成する要因としては混雑外部費用の影響が大きく、外部費用の観点からは混雑を解消する政策を実行することが望ましい。外部費用の推計値など不確定な要素が大きいため推定値はかなりの幅をもって解釈した方が良いが、外部費用負担の観点からは揮発油税などの暫定税率を廃止してガソリン税の税率を引き下げるという政策を正当化することはできないことが明らかになった。