簡易ガス事業・一般ガス事業における「内々価格差」の比較分析

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2008年6月  08-J-023
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概要

ガス事業については、広域的な供給を行う一般ガス事業(いわゆる都市ガス事業) 215社と、特定の団地・建物内の区域で主に家庭用に供給を行う簡易ガス事業約1700社・8000供給地点が存在している。簡易ガス・一般ガス事業者の間では、それぞれ2倍を超える大きな「内々価格差」が存在するとされているが、当該価格差の実態について客観的手法を用いた比較分析がなされておらず議論に混乱が見られるところである。

本稿では、ガス事業年報及び(社)日本簡易ガス協会調べによる一般ガス事業・簡易ガス事業の家庭用料金と各種供給指標などから、各ガス事業の地域別・原料別の家庭用価格分布などを統計的に分析し、各ガス事業での「内々価格差」がどのような実態にあるのかを比較分析することを試みた。

比較分析の結果、全国及び大部分の地域・都道府県別で一般ガス事業と比較して簡易ガス事業の方が有意に家庭用料金が低く、かつ料金のばらつきが小さいことが観察された。

さらに、メータ当供給量を補正して比較した場合、ガス事業法上で優先的位置づけが与えられているにもかかわらず、簡易ガス事業よりも一般ガス事業の方が¥0.2~0.5/MJ程度有意に料金が高いことが判明し「内々価格差」問題が深刻であることが確認された。

また、一般ガス事業の供給区域に対する簡易ガス事業の参入においては、簡易ガス事業が供給区域内に存在する一般ガス事業は有意に家庭用料金が高いが、簡易ガス事業では有意な差がなく、局所的な参入による競争効果が有効に機能していないことが示された。

当該結果を踏まえ、今後さらにガス事業内部、特に一般ガス事業内部での「内々価格差」の発生要因や、経営努力や政策制度の改革による改善余地の程度について、詳細な費用構造や供給地域の条件などを踏まえて分析し解明していくことが必要であると考えられる。