都市ガス事業における「内々価格差」の定量的評価分析

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2008年2月  08-J-001
ダウンロード/関連リンク
備考 ※ファイルサイズが大きいPDFです。ご注意下さい。

概要

都市ガス事業においては、1990年代後半から競争の促進による価格低減と経済厚生の維持・拡大のため、一連の部分自由化などの政策制度変更が行われてきたところである。

しかし、国内の都市ガス事業者間では大きな「内々価格差」が依然として存在し、その原因については人口密度や経営規模の格差、原料の差異などの定性的説明や外形的な比較分析がなされているに止まっており、「内々価格差」の要因分析や政策制度変更との関係は必ずしも明らかではない状況にある。

本稿では、ガス事業年報を用いて都市ガス事業の経営指標を政策制度変更の前後で横断面分析し、「内々価格差」の要因と政策制度変更との関係を分析することにより、今後如何なる方策によってこれを緩和・解消し得るのかという点について定量的に評価分析することを試みた。

評価分析の結果、都市ガス料金・価格の「内々価格差」は、資本・労働生産性の格差拡大に伴い拡大する傾向にあること、資本・労働生産性はともに経営規模や顧客当販売量・年負荷率などの経営効率指標と正の相関があり、公営事業では資本生産性が低いことなどが確認された。

また、費用面から見た場合、都市ガスの製造費用は総販売量の逆数と正の相関があり強い規模の経済性が働いていること、供給費用・管理費用は顧客当販売量・年負荷率・区域普及率などの経営効率指標と強い負の相関があることなどが確認され、規模格差・経営効率格差が費用格差をもたらし、料金・価格格差が発生する原因となっていることが示された。

一方、1995年・2005年の比較分析で見る限り、部分自由化などの一連の政策制度変更が「内々価格差」を縮小する方向に作用した形跡はなく、当面の間は「内々価格差」の緩和・縮小に向け、全ての都市ガス事業者が現在の資本・労働生産性の平均値を達成することを目標として、事業者間合併・提携の強力な推進、負荷平準化料金制度の導入、公営事業の民営化などの「内々価格差」是正施策を講じていくことが必要であると考えられる。