欧州経済領域(EEA)における法の均質性―複数地域経済統合体の融合と域内共通秩序実現の一例として―

執筆者 小場瀬 琢磨  (リサーチアシスタント)
発行日/NO. 2007年12月  07-J-051
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概要

ECとEC加盟国は、EFTA加盟国との間に「欧州経済領域に関する協定」(EEA協定)を締結し、欧州経済領域という地域統合体を形成している。このEEA協定は、二地域統合体が存続しながら一地域統合体を形成する上で解決すべき問題を提起している。両地域統合体の法的規律の間の乖離抵触を避け、互いの権利利益の均衡性を保つためには、融合地域統合体の法制度がどうあるべきかという問題である。本稿は、「EEAにおける法の均質性」原則を手がかりとしてEEA制度を分析し、この問題について検討したものである。

EEA協定は、EC条約と実体内容を同じくする多くの規定を含んでおり、またEC二次立法をEEA法へ移植するための編入制度も設けている。さらにEFTA内部では、EFTA固有の司法機関としてのEFTA裁判所、および、EFTA内でのEEA法の適用を監視するEFTA監視機関が設けられている。これらの制度や実体規定は、対応EC制度やEC法実体規定との類似性を示すが、それでもEFTA側で異なった運用のなされる可能性が残る。この欠落を埋める役割を果たしているのが均質性原則である。均質性原則の規範的要求は、第一にEC法規と本質的に同一内容のEEA法規に同様の解釈を与えるということであり、第二に、EEA協定の適用結果が均質になることである。その表れは、EC立法をEEA共通法としてEFTA諸国法に取り入れるための制度、および、欧州司法裁判所に類似したEFTA裁判所の紛争解決手続の構成に見ることができる。さらに、EFTA裁判所の判例には均質適用結果の実現を目指したものが蓄積されている。

複数地域統合体の融合という問題に対するEEAでの解決は、EC法に強く牽引されてきたものであり、また、裁判所主導の統合という統治のあり方を前提としたものである。この点を留保する必要があるが、均質性原則は地域統合体の融合に当たって避けられない問題に対する解決手段と評価しうる。