開発援助と経常費用 ドナー間競争、援助の氾濫、財政支援

執筆者 有本寛  (日本学術振興会特別研究員/ 東京大学大学院経済学研究科) /高野久紀  (アジア経済研究所)
発行日/NO. 2007年10月  07-J-041
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概要

近年の実証研究によれば、開発援助が経済成長を促進するという明確な結論は得られていない。本稿は、開発援助が経済成長に結びつかない理由として、援助受入国の経常予算に対して、開発援助による投資が過剰である「援助の氾濫」に着目する。なぜならば、開発援助プロジェクトは、十分な経常費用が賄われているときに限って、持続的にその便益をもたらすからである。本稿では、援助受入国の経常予算の不足を補い、開発プロジェクトの要素投入バランスを是正する手段として、援助ドナーによる財政支援の効果を理論的に検討する。ドナーが、他ドナーのプロジェクトよりも自らのプロジェクトの成功を高く評価する「自己中心的」な選好を持っているとき、当該ドナーは財政支援を出し惜しみ、したがって援助の氾濫が発生することを示す。さらに、援助の氾濫はドナーが多くなればなるほど悪化する。