執筆者 |
坂田 一郎 (コンサルティングフェロー) /梶川裕矢 (東京大学工学系研究科総合研究機構) /武田善行 (東京大学工学系研究科総合研究機構) /橋本正洋 (NEDO企画調整部) /柴田尚樹 (東京大学工学系研究科総合研究機構)/松島克守 (東京大学工学系研究科総合研究機構) |
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発行日/NO. | 2007年5月 07-J-023 |
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概要
イノベーションの創発がクラスターとしての環境条件が形成された地域に集中する傾向がみられる。クラスターが持つ高いイノベーション創発力を支えているものが‘small-world’型のアーキテクチュアを持ったネットワークである。
政策的な努力によって、近距離交流と遠距離交流の双方をバランス良く可能とする環境を提供する‘small-world’性の高いネットワークを形成することが出来れば、地域のイノベーションの創発力を高めることにつながる。現在、実施されているクラスター政策は、第一期が終了し、第二期へと移行する節目の時期に当たる。2つの交流の視点から、ネットワークのアーキテクチュアを客観的に把握し、評価する手法の定式化を試みた。
具体的には、国内に形成された主要なネットワークのアーキテクチュアについて、ネットワーク分析の手法を用いて、12地域・分野及びクラスター政策開始前(2000年)と政策実行後(2005年)との比較分析を行った。その結果、判明したことは、次のような点である。(1)全地域でネットワークは拡がっている、(2)遠距離交流の特性に優れたネットワークは近距離交流の特性も優れている、(3)両特性ともに、少数の例外はあるが、大規模なネットワークほど有利である、(4)各地域・分野の相対的な優位性はこの5年間では大きな変化はない、(5)モジュールの独立性と ‘small-world’性との間には一定の相関がある、(6)分野間の差よりも地域間の差の方が大きい。
本分析手法を用いることで、ネットワークのアーキテクチュアを他の地域・分野と比較可能な形で定量的に把握した上で、政策立案に必要な客観的な情報を抽出することが可能となった。今後、このような分析結果を踏まえた効率的なネットワーキング活動の実施が期待される。