液晶産業における日本の競争力―低下原因の分析と「コアナショナル経営」の提案―

執筆者 中田行彦  (立命館アジア太平洋大学大学院経営管理研究科)
発行日/NO. 2007年4月  07-J-017
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概要

液晶ディスプレイは、日本が実質的に研究・開発した独創技術である。このため、日本がリーダーシップを取り、液晶産業を創造し、成長させてきた。しかし、韓国、台湾が参入し、近年両国は日本を追い抜いた。なぜ日本は韓国、台湾に追い抜かれたのか? 液晶のみならず半導体や多くの産業でも同じような競争力低下を招いてきた。

この原因を明らかにするため、アーキテクチャとナレッジ・マネジメントの視点から分析した。

液晶産業は、他社より大きなガラス基板を用い、他社より大きな液晶パネルを生産しようと、標準ガラス基板サイズや「標準化装置」が無く、「擦り合わせ型」のアーキテクチャを持つ。このため、シャープ亀山工場の事例から、日本の競争力の源泉は、クローズド・イノベーション・ネットワークにおける「暗黙知の擦り合わせ」にあると言える。

一方、液晶産業を牽引する製品は、近年パソコンから液晶テレビに代わった。

ソニーは、自前のディスプレイを持たないが、韓国サムスン電子と合弁会社を設立し、メタナショナル経営を実践している。

一方、シャープは、シェアが日本では非常に高いが世界では低かった。このため、日本での液晶パネルの生産をコアに、世界5拠点で液晶テレビの組み立てを行うと共に、液晶パネルのOEMも行って、事業価値の最大化を図ろうとしている。

本研究から、日本の競争力の強化のため、「暗黙知の擦り合わせ」による「コアナレッジ」を国内に形成し、これを基に事業価値を最大化すべく、世界を見据えた最適配置を行う「コアナショナル経営」を提案する。