出生率の実証分析-景気や家族政策との関係を中心に

執筆者 戸田淳仁  (慶應義塾大学経済学部)
発行日/NO. 2007年3月  07-J-007
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概要

わが国では急速に少子化が進展し、2005年には合計特殊出生率が1.25までに低下した。このような少子化は景気と関連があるのだろうか、また政府の政策がどれだけ少子化に歯止めをかける効果があるのだろうか。本稿では、家計所得や労働市場の需供状態などの景気を表す指標や少子化に関連した家族政策、たとえば児童手当の支出額や保育園の定員数拡充が出生率にどれだけ影響しているかについて検討した。1985年から2004年までの都道府県ごとのデータを利用して分析した結果、雇用環境の改善は出生率を押し上げる効果があるが、その効果はわずかといわざるを得ないことがわかった。また、少子化に関連する家族政策の効果はほとんど観察されなかった。この結果は先行研究と異なるが、特定の世帯に対しては家族政策が有効であっても、マクロ的には効果が現れない可能性が示唆された。