開発援助は直接投資の先兵か? 重力モデルによる推計

執筆者 木村 秀美  (研究員) /戸堂康之  (青山学院大学)
発行日/NO. 2007年3月  07-J-003
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概要

本稿では、開発援助が開発途上国への海外直接投資を誘引するのか、するとした場合どのように誘引するのかについて検討する。検討に際しては、開発援助および直接投資の出し手および受け手の国をペアにした大きなデータセットを用いて、重力モデルによる推計を行う。本稿の実証分析では、開発援助の直接投資誘因効果を3つのタイプ‐正の「インフラ効果」、負の「レントシーキング効果」、正の「先兵(バンガード)効果」に区別することが可能となる。「先兵効果」は、開発援助と直接投資が同じ出し手と受け手の国のペアである場合に特有な効果である。実証分析によれば、開発援助は一般的にはこれらの3つの効果を必ずしももたらさないことがわかった。しかし、日本の開発援助には先兵効果があるという頑健な結果が得られた一方、他の援助国の開発援助にはそのような効果がないことが明らかになった。この先兵効果は日本の開発援助に特徴的といえるだろう。