少子高齢化と国民負担率

執筆者 岡本 章  (岡山大学経済学部)
発行日/NO. 2006年12月  06-J-056
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概要

本稿では、少子高齢化の急速に進展するわが国における税制改革の指針を得るために、望ましい国民負担率の水準について考察を行った。ライフサイクル一般均衡モデルを拡張し、家計の受益と負担を包括的に考慮できる分析モデルを用いている。その際、家計の効用関数において公共サービスからの便益に対して与えられるウェイト・パラメータの設定が重要になってくるが、本稿では、経済産業研究所が実施した、最適負担に関するアンケート結果に基づいてそのパラメータの推定を行っている。シミュレーションの結果、少子高齢化が進展するにつれて望ましい国民負担率が上昇していくこと、2050年にはそれが50%を超える可能性があることが示唆された。また、今後の公的年金制度に関して、所得代替率を現在と同一に保つ場合と、政府の現行の年金スケジュールに従って保険料率に上限を設ける場合とでは、長期的には、社会保障の規模および国民負担率にかなり大きな違いが生じることが定量的に示された。