東アジア地域における製品アーキテクチャのモジュール化と貿易構造の変化についての実証分析

執筆者 桑原 哲  (上席研究員)
発行日/NO. 2006年7月  06-J-050
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概要

東アジア地域における域内貿易のパターンは、直接投資の拡大に促され、産業間分業から産業内分業に進化してきていると一般に考えられてきた。しかし最近の直接投資の拡大は、生産工程を地理的に分散する余地を拡大する製品アーキテクチャのモジュール化の進展に促された面があり、モジュール化の進展は水平的、垂直的な製品の差別化の余地を縮小して国際的な分業関係を産業内分業から産業間分業にシフトさせる側面もある。本稿ではモジュール化の進展が東アジア地域の貿易構造に大きな影響を与えているのではないかという問題意識のもとで、分業構造の細密化の動きは一様ではなく、モジュール化レベルの違いによって異なる複合的な動きであることを実証し、その現状を明らかにするため、モジュール化の水準のよって区分した品目グループ毎の東アジア地域における貿易構造を分析した。その結果、日本と他の東アジア諸国との関係では、インテグラルな構造の品目では、国際的に水平的、垂直的な差別化が行われ、それを反映した産業内貿易、特に垂直的産業内貿易傾向が強まっているのに対し、モジュール化のレベルの高い品目では、水平的、垂直的な差別化はむしろ後退し、品目単位での棲み分けが進み産業間貿易の傾向が強まっていることが明らかになった。また、他の東アジア諸国は、貿易構造において日本と補完的関係に立つ一方で、日本以外の国との関係では相互に競合しあう関係にあることがモジュール化レベルの高い品目において特に顕著であることも明らかになった。