執筆者 |
宮島 英昭 (ファカルティフェロー/早稲田大学) |
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発行日/NO. | 2006年6月 06-J-044 |
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概要
戦後日本経済の発展のなかで、これまで国内企業の合併・買収が活発化するという事態は見られなかった。しかし、1990年代後半から、日本におけるM&Aが急増し、戦後はじめてのブームを迎えている。件数ベースでみると、2004年にはM&Aは2000件を超え、10年前に比べて約4倍に増加した。では、なぜ1990年代半ば以降、国内企業間のM&Aを中心にM&Aは急速に増加したのか、こうしたM&Aの増加は、これまでのわが国のM&Aの展開や、国際的なM&Aの動向から見てどのような特徴をもつのか、そして、近年の増加するM&Aはいかなる経済的役割を演じているのか。本稿の課題は上記の一連の問いに一次的な解答を与える点にある。そのために本稿では、まずM&Aの経済的役割について、その二面性に注目した理論的整理を試みる。次にその視角から20世紀の日本企業の成長過程におけるM&Aの展開を概観し、戦前にはM&Aが企業の成長戦略としても、事業再組織化の手段としても重要な役割を演じたこと、他方、高度成長期にM&Aが制度的要因のために低迷したことを示す。最後に、1999年以降のM&Aの急増の局面を扱い、その発生要因、特徴、経済的役割について検討して、M&Aが90年代末からの創造的破壊をともなう構造調整の過程において極めて重要な機能を果たしているという見方を提示する。