地域貿易協定における「技術的貿易障壁」の取り扱い
-相互承認の制度を中心として-

執筆者 内記香子  (大阪大学大学院国際公共政策研究科)
発行日/NO. 2006年5月  06-J-042
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概要

本稿は、地域貿易協定(regional trade agreements:以下、「RTA」)において、技術的貿易障壁(technical barriers to trade:以下、「TBTs」)についてどのような規律が設定されているか分析するものである。とりわけ、RTA上、TBTsに関して「相互承認」を設定している場合を中心に検討する。RTAのサーベイ結果によれば、その多くはWTOの「貿易の技術的障害に関する協定」上の基本的義務を踏襲しているに過ぎず、そのような結果は想像に難くない。なぜなら、TBTsの分野において、WTOプラスの規律を行う場合、「相互承認」あるいは「ハーモナイゼイション」となり、それに合意するのは容易ではないからである。しかし、一部のRTAにおいて相互承認制度が設定されていることから、本稿では、相互承認に関する先行研究・定義・プラクティスを明確にした上で、交渉過程及び締結後の相互承認の運用までを包括的に検証する。ケース・スタディとして、日・シンガポール新時代経済連携協定の中での相互承認を取り上げ、両国の関係者への聞き取り調査を行った。聞き取り調査をすることで、相互承認の締結及び実施に伴う問題をより動態的に把握することが可能となる。理論と実証のギャップが浮き彫りになったその瞬間に、相互承認に関する今日的な教訓を得ることができるのではないかと考える。