企業が望む金融サービスと中小企業金融の課題
-関西地域の企業金融に関する企業意識調査を中心に-

執筆者 家森信善  (名古屋大学)
発行日/NO. 2006年1月  06-J-003
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概要

2003年3月に策定された「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」以来、金融行政はもちろんのこと、地域金融機関自身がリレーションシップバンキング機能の強化に努力してきた。しかし、中小企業が地域金融機関に本当に望んでいるものはどのようなものであるのかは必ずしも明らかになっていない。当然ながら、中小企業は非常に多様であり、また金融環境が大きく変わってきているために、現実の中小企業の声をくみ上げる取り組みが企業の望む金融システムを構築していく上で不可欠である。そこで、本研究では、2005年6月に関西地域(大阪府、京都府、兵庫県)の企業9000社に対するアンケート調査を実施し、2041社から回答を得た。本稿はこのアンケート調査の結果を紹介し、企業が地域金融機関に何を望んでおり、そのためにどのような政策的な課題があるかを探るものである。

このアンケート調査は、第I部・アンケート回答者の属性、第II部・回答企業の属性、第III部・回答企業の経営全般、第IV部・財務の一般的な方針、第V部・メインバンクとの関係、第VI部・銀行取引一般、第VII部・金融機関による中小企業審査のあり方、第VIII部・信用保証制度、と幅広く中小企業金融の重要問題を網羅した内容となっている。その回答結果を分析することで、わが国の地域金融、特に中小企業の金融の現状と課題が明らかにできた。さらに、筆者が別に実施した東海地域企業に対する同種のアンケート調査や他の機関によって実施された調査などと対照することができるように設問を用意しているので、関西企業の他地域と比べた相対的な特徴についても明らかにすることができた。

本稿の具体的な構成は次の通りである。まず、第2節では、関西企業の概況について簡単に触れる。第3節で、アンケート調査の概要を説明する。第4節から第9節で、アンケートへの回答の分析を行う。第10節はデータの利用可能性から回答企業の内745社に限定されるが、バランスシートデータを使って企業の財務的な属性とアンケート回答の間の関係を分析する。そして、第11節で、本稿から得られる政策的なインプリケーションをまとめている。なお、付録として、末尾に今回の調査に使ったアンケート用紙を添付している。