執筆者 |
播磨谷浩三 (札幌学院大学経済学部) /永田貴洋 (格付投資情報センター) |
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発行日/NO. | 2006年1月 06-J-002 |
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備考 |
(この論文は経済産業研究所の研究プロジェクトの一つである「企業金融研究会」の成果の一部である。この研究会の成果の全体像と各論文の位置付け等についてはこちらを参照) |
概要
本論では、中小企業金融におけるメインバンク関係について、地域金融機関(地銀、第二地銀、信金)をメインバンクとする中小企業のみを対象に、メインバンクの効率性と貸出態度とがどのように関連しているのか実証分析を行っている。従来、メインバンクの健全性に関する指標としては、不良債権比率や自己資本比率等の個々の財務諸表の情報に基づくものが一般的に用いられているが、確率的フロンティア・アプローチから得られる費用効率性は、銀行産業全体の生産費用構造を反映して導出される指標であり、相対的な健全性の違いを示す指標として優れていると考えられる。本論で得られた実証結果は以下のように要約することができる。
まず、費用効率性を健全性の指標として使用することの確認として、不良債権比率等の指標と費用効率性とがどのように関連しているのかについて検証したところ、費用効率性は主要なバランスシート情報によって有意に説明される包括的な指標であることが確かめられた。次に、この費用効率性を用いて検証された貸出態度との関連については、メインバンクが費用効率的であればあるほど、借り手からの追加の借入れ要望に対して積極的に対応することが確かめられた。また、メインバンクが費用効率的であればあるほど、既存の借入れ契約に対して借り手に厳しい要請をしない傾向にあることが確かめられた。最後に、貸出態度とメインバンクの費用効率性の変化との関連については、既存借入れについて短期金利引上げや預金積み増しの要請を行ったメインバンクほど、費用効率性が次年度に改善したことが確かめられた。