女性の労働力参加と出生率の真の関係について:OECD諸国の分析

執筆者 山口一男  (客員研究員 / シカゴ大学社会学部)
発行日/NO. 2005年12月  05-J-036
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概要

OECD諸国では女性の労働力参加率と出生率の関係が1980年代に負の相関関係(労働力参加率の高い国々は出生率が低い)から、正の相関関係(労働力参加率の高い国々は出生率も高い)に転じたことは既に知られているが、これはこの2変数間の因果関係の変化を意味するのか、それとも他の要因によるものかは未だに明らかにされていない。本稿では、各国固有の観察されない出生率の決定要因を考慮・制御するとOECD諸国で女性の労働力参加率と出生率の因果的関係は平均的に見て依然として負の関係であるが、1980年代以降有業有配偶女性にとって仕事と家庭の役割の両立しやすい社会環境(仕事と家庭の両立度)が整ってきたことがこの負の関係を、(1)女性の労働力参加とこの「両立度」の交互作用効果(2)労働力参加の負の直接効果を相殺する「両立度」を通した正の間接効果、の2つのメカニズムによって弱めてきたことを明らかにする。またこれらの事実がわが国の少子化対策に意味することは何か、も議論する。