ノンバンク融資と中小企業のモラルハザード問題

執筆者 鶴田大輔  (政策研究大学院大学)
発行日/NO. 2005年12月  05-J-035
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備考

(この論文は経済産業研究所の研究プロジェクトの一つである「企業金融研究会」の成果の一部である。この研究会の成果の全体像と各論文の位置付け等についてはこちらを参照)

概要

中小企業に対する貸し手の一つとしてノンバンクがあげられる。ノンバンクは預金を取り扱う金融機関と違い、無担保で高金利の与信を行うことが多い。そのため、情報の非対称性に伴う逆選択やモラルハザードの問題が発生している可能性が高い。本稿では中小企業庁が実施した「金融環境実態調査」のマイクロデータを利用して、ノンバンクを利用した企業がモラルハザードを起こしていないか実証的に検証する。本稿の主張は以下の二点である。1)ノンバンクの融資額や事業者数は減少しているものの、総資本経常利益率は高い水準を維持している。また、店舗数は減少しておらず、ノンバンク側のデータから見ると市場が縮小しているとはいい難い。2) Bivariate Probit Modelにより中小企業の個票データを分析した結果、ノンバンクを利用した企業が1年後に債務超過に陥る確率は高い。この結果からノンバンクを利用した企業がリスクが高い事業を選択しており、貸し倒れの可能性が高まったと考えられる。計量分析結果はモラルハザードの問題が発生していることを示唆している。