日本の地域間連系送電網の経済的分析

執筆者 戒能 一成  (研究員)
発行日/NO. 2005年12月  05-J-033
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概要

2000年度からの電気事業制度に関する制度改革により、特定規模需要にについての小売が自由化されたが、各一般電気事業者の管内を結ぶ地域間連系送電網については、その現状と形成過程についての体系的な分析が殆ど行われていない状況にあり、電気事業制度の議論における基礎的知見が不足している状況が見受けられる。

本稿では、「電力需給の概要」などの公的文献を基礎に、日本の地域間連系送電網の現状とその形成過程についての経済的分析を試みた。

2003年度現在、日本の地域間連系送電網の平均稼働率は27%程度であり、8月最大需要期においても65%程度しか利用されていない状況にあることが観察された。当該結果から、8月最大需要期以外の期間においては、一部の例外的な区間を除いて送電容量に極めて大きな余裕が存在することが観察された。

一方、地域間連系送受電量と地域別の電源構成の相関関係についての観察を基礎に、首都圏・関西圏の発電・送電の費用を推計したモデル(「電源構成・立地モデル」)を構築して分析を行った結果、首都圏・関西圏ではLNG複合発電を都心部から100km圏に、石炭火力発電・原子力発電を200km圏に離れて立地することが費用極小を与えるものと試算された。

当該結果から、1990年代以降の地域間連系送電網は、費用極小となる電源の立地点が首都圏・関西圏の一般電気事業者の供給区域の外となるために必然的に形成されたものであり、首都圏・関西圏などの大需要地に向け、供給区域を跨いで石炭火力発電所・原子力発電所と送電系統が一体的に建設されることに付随して整備されてきたものと評価された。

また、現在観察される地域間連系送電網の送電容量の大きな余裕は、長期的な電源開発と送電系統整備の費用最小化の原理に従い、将来の電源整備を見越して予め大きな余裕を持って送電系統が整備されてきたことによるものと考察された。