大都市の集積の利益-東京は特殊か?

執筆者 八田達夫  (ファカルティフェロー) /上田浩平  (大阪大学大学院経済学研究科) /唐渡広志  (富山大学経済学部)
発行日/NO. 2005年3月  05-J-011
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概要

オフィスが立地点の周辺地区での就業者密度が高いほど、1日に可能な対面的接触数が増えるため、オフィス業務の生産性が上昇する。これが、都市の集積の利益である。

一方、東京の都心のオフィス生産性は、他都市のそれと比べて遙かに高い。この高い生産性は、基本的には東京のより高い集積度のみによって説明出来るのだろうか。それとも、東京で生産している財貨サービスの特殊性や東京に首都が存在することによって生産関数自体が、全く他の都市とは異なるものなのであろうか。本稿ではこの問題を分析する。

集積度の高い地区ではオフィス賃料が相対的に高くなることを利用して、一都市内のオフィス業務の生産関数を測定されてきた。本稿では、異なる都市間にこの測定法を応用する。結果的には、日本の7つの政令指定都市の個票データを用いると、札幌を除くすべての都市における生産量と投入量の関係を基本的には1本の生産関数で説明できることを示す。すなわちこの関数に各都市に対応した都市ダミー変数を追加しても、ダミー変数が有意には効かないことを示す。

この分析は、東京と他都市との生産性の差が、根本的には、規模の経済によるものであり、東京が生産する財貨サービスの違いや、首都の存在によるものではないことを示している。